ちょっとばかりセンセーショナルなタイトルを付けさせてもらいました。
さて、最近話題の年金問題がありますね。
そう、老後2000万円問題です。
定年退職後、2000万円程度の貯蓄が必要だ、という金融庁のレポートです。
確かに大変です。
2000万円、決して安い金額ではありません。
今から貯めていくとして、若い人でも大変です。
もう若くない人はもっと大変です。
が、そんなことはどうでもいいのです。
さて、この老後2000万円問題ですが、本質的な問題は方々で語られていてすでに語りつくされていると思うので、本質的ではないが根本的な問題の方を掘り下げていきたいと思います。
どうしてこれが問題になってしまったのでしょうか。
そこには、野党が巧妙に仕組んだ詭弁が潜んでいます。
この記事では、老後2000万円問題を問題に仕立て上げた野党の巧妙な詭弁のテクニックを明らかにします。
目次
100年安心プラン
老後2000万円問題と並んで議論の俎上に上りがちなのがこの「100年安心プラン」です。
何かというと、「年金制度がこの先100年崩壊することなく継続できるようにしました」という話です。
誤解されがちですが、「100歳まで生きても年金で安心して暮らしていけますよ」ではありません。
結局のところ今回年金で問題になったのは、
- 定年後2000万円も必要なの!? なんで!?
- 100年安心って言ったじゃん!? なんで!?
のコンボが決まってしまったからです。
ぶっちゃけどっちが問題かというとどっちも問題にならないのですが、根本的な方でいうと100年安心プランの方が問題になります。
蓮舫さんも舌鋒鋭く追及していましたが、結局問題の本質とは全く関係ないところで追及していたのは振り返ってみればちょっと面白いです。
それはともかく、ある意味現在の年金制度の安心の基盤を見かけ上論理的に打ち崩したという点で評価に値します。
老後2000万円問題が現れるまで、特に政治的に年金は話題になっていませんでした。
もちろん、問題が何もなかったわけではないですが、少なくとも世間的にはいろいろな問題が下火になって、落ち着いた状態ではあったわけです。
そこに急に飛び込んできたのが老後2000万円問題。
老後の資金が年金だけで賄えるなどと思っているおめでたい方は賢明なる読者諸賢の中にはおられないと思いますが、まあ足りないとは思っていても「そんなに足りないのかよ……」とちょっとショックを受けたのではないかと思います。
で、ここで問題なのが年金制度のキャッチコピー(的なもの)である「100年安心プラン」。
何が100年安心なのかと言えば前述の通り年金制度が100年安心なわけですが、この100年という期間が実に微妙。
100年と聞くとまあ長い期間だなと思うでしょうが、一方で長寿を表す一つの区切りの年でもあります。
年金+100年+安心=自分の年金は100歳になっても安心だな。
という誤解が生まれても致し方なかろうと思います。
老後2000万円問題の論理構成
ここで蓮舫さんの追及の論理構成を確認しておきます。
- 定年まで働いて年金をもらっても退職後35年で2000万円も不足するんですか?
- 100年安心なんですよね? 嘘だったんですか?
直感的には論理的に矛盾はないように見えますし、ぶっちゃけ私もテレビで見ていて「まあそれはそうだよな」と納得してしまいましたが、いくつか蓮舫さんにとって都合のいい解釈に基づいた論理展開がなされているので、明らかにしておきます。
2000万円不足→嘘ではないが本当でもない
これはほかの皆さんがさんざん説明していると思うのでいちいち説明する必要もないかと思います。
あくまでこの2000万円は
「調査対象になった世帯」の
「平均的」なモデルケースにおいて
「退職前と変わらない生活を送るとした場合」
に不足する金額なので、極端な話、
「調査対象にならなかった世帯」の
「平均より上の収入がある」ケースにおいて
「退職前よりも質素な生活を送るとした場合」
には不足額は2000万円よりも格段に少ない金額になるでしょうし、何なら不足しない可能性すらあります。
様々な前提条件がある中で、それら全部をすっ飛ばして2000万円だけクローズアップするのは、ある意味でこの問題を2000万円という金額で代表化する(名づける)という手法によるものです。
これによって、「結構大きい金額が不足する問題」に問題が再設定され、自民党としては苦しい説明を迫られたわけです。
100年→100歳ではない
これも前述の通りですが、言葉の主語が「年金制度」から「国民」に置き換わっています。退職後35年も同じ理屈です(65歳定年+35年=100年)。
「100年安心プラン」が初めて出てきたのはもう十数年前のことです。
テレビの視聴者もいちいち言葉の意味するところを覚えているとは思えませんし、言葉面だけ見て理解することになります。
そこで、質問者の蓮舫さんが100年安心プランを定年退職後35年の不足額2000万円と絡めて追及したわけです。
すると不思議なことに、100年間「年金制度が」安心だった話が、100年間「年金受給者が」安心ということに置き換わってしまいました。
この攻勢の絶妙なところは、守勢の自民党が「年金制度が」安心なのであって「年金受給者が」安心なわけではないという回答ができない(しにくい)ところにあります。
「年金受給者が」安心でないのは自明ですが、そんなことをわざわざ回答すれば野党に格好の追及材料を提供することになるわけで、ある意味この制度の政治的急所を突かれた形になっています。
安心と言ったがあれは嘘だったのか→嘘ではないのだが……
本件最大のポイントはこの質問にあります。
じっくり冷静に考えればわかるのですが(逆にそうでないと気付くのがかなり難しい)、いわゆる詭弁の類型で「多重尋問」と呼ばれる形式になっています。
ある質問の答えを前提にして、それについてさらに質問を重ねる形になっています。
わかりやすい多重尋問の例では、
「あなたはもう奥さんを殴るのはやめたんですか?」
というものがあります。
これに「はい」と答えれば、過去に奥さんを殴っていたことになり、「いいえ」と答えてもやはり奥さんを殴っていたことになります。
で、「安心と言ったがあれは嘘だったのか」を肯定すると、当然「安心ではなかった」となり、追及されます。
「安心だ」と答えると、「安心と言ったのに2000万円も不足するじゃないか。おかしいじゃないか」と、結局追及されます。
多重尋問ポイントは前提となる質問にあるのですが、この場合の前提となる質問は、「安心だと言いましたね?」ということになります。
これだけ聞くと、「確かに安心だと言った」と答えたくもなりますが、さらに罠があります。
この「安心」という言葉の意味するところが人によって異なります。
野党からすれば「国民が100年安心して年金を受け取って生活できる」、
自民党からすれば「年金制度が100年間維持され、国民が安心できる」となり、
「確かに安心だと言った」と答えた場合には、自民党にとって意図しない「安心」を肯定させられることになります。
異なる意味(背景)を持つ言葉を媒概念にしているこの論法は媒概念曖昧の虚偽と言います。
つまり、異なる意味を持つ言葉を前提質問として多重尋問を仕掛けることで、一言では回答できない極めて対応の難しい状況を作り出したのです。
では自民党はどうすべきだったのか
二つの対応が考えられます。
会議は終わってしまっているのでどちらにしてもすでに遅い対応ではあるのですが。
- 蓮舫さんの質問の不整合を全て正して回答する
- (過去に戻って)100年安心プランの名前を変える
蓮舫さんの質問の不整合を全て正して回答する
議場で上記の質問をされてしまったなら、これしかないでしょう。
結局、蓮舫さんの質問はいくつかの状況を都合のいいように解釈し、自分にとって都合のいい回答が出てくるように巧妙に仕組まれた質問になっています。
であれば、その一つ一つを紐解いて、正しく前提を当てはめて間違いのないように丁寧に回答していくしかありません。
もっとも、議場でこれを行っていると回答が死ぬほど長くなるので、それはそれで「簡潔に答えてください」とか言いがかりみたいなことを言われる可能性はあります。
また、テレビで全部を放送することもできないでしょうから、恣意的にカットされて結局意図が国民に伝わらない可能性はあります。
そういう意味では、すでに詰んでいる感じはします。
(過去に戻って)100年安心プランの名前を変える
タラレバの話になるので意味がない方法ではあります。
老後2000万円問題が浮上してくるにあたって最大のネックが何だったかと言えば、この「100年安心プラン」のネーミングに他なりません。
野党が突いてきたのも「100年安心プラン」の名前が持つ「安心」の印象と「2000万円」という実態の乖離です。
「100年安心プラン」が「100歳まで安心」と誤解されたのが自民党にとって最も都合の悪かった部分ですから、これを「1000年安心プラン」に変えれば、少なくとも今回の蓮舫さんの論法は機能しなくなります。
さすがに「1000年安心プラン」が「1000年生きても年金がもらえる制度」だと誤解するような人はいないでしょう。
では我々はどう対応するべきなのか
さて、ここからが我々にとっての本題です。
いかに老後2000万円問題が詭弁によって問題化されたものであったとしても、老後に貯蓄が2000万円なければ立ち行かない(場合がある)ことに変わりはありません。
当然ながら、アプローチは2通りあります。
- 出費を減らす
- 収入源を作る
出費を減らす
あまりにも当たり前ですが、老後に必要な2000万円という金額は、退職前と同じ水準の出費を維持する場合の金額です。
当然、出費を減らせば必要額は減少します。
若い方は今から節約していれば老後の出費を抑えるだけでなく、貯蓄を増やすこともできるでしょう。
長期的に見ていけば、何らかの固定費を削減していく必要があるでしょう。
電力会社の切り替え
電力の自由化が始まってだいぶ時間がたちました。
まだ電力会社を変えていないのであれば、固定費削減のチャンスです。
格安SIMへの変更
携帯の料金もなかなか馬鹿にはできません。
自分の利用料と金額を天秤にかけて、月額どれくらい安くなるかを改めて計算しておいた方がいいでしょう。
収入を増やす
こちらも当然と言えば当然で、かつ意外とどうしたものかわからないものです。
こちらのアプローチは大きく2つに大別されます。
- 現役のうちに収入を増やす
- 退職後に収入を得る
前者は転職か副業、後者は潰しのきくスキルを身につけておく方向でしょうか。
転職
一口に転職と言っても色々な方向性が考えられます。
ここで語るのはあまりにわき道にそれすぎますので、割愛。
転職サイトに会員登録するか、エージェントサービスに登録しておきましょう。
あとは今の仕事が向いているかどうかはあらかじめチェックしておいた方がいいでしょう。

副業
副業の選択は非常に難しいところです。
とりあえずプログラミングの勉強をしておくと何かとつぶしが効くようになるでしょう。
本での学習はあまりお勧めするところではありませんが、やり切れば確実に力になります。
また、退職後にも役に立ちます。
あと、あまりお勧めはしませんが、株式などの投資は爆発力では別格です。
資金が減る可能性があることを念頭において挑むのならそれもありでしょう。
なお、株式配当、株主優待目当てであれば、ほとんどお金をかけずに投資することもできます。
退職後に収入を得る
これは副業収入に近いものがあります。
結局、会社に所属せずに収入を得るということになりますから、退職する前に副業で「1円でも稼げるのだ」という考えをはぐくんでおくことが必要でしょう。
詭弁から身を守るために
さて、さんざん与太話を展開しましたが、今回のような極めて巧妙な詭弁を展開されたときに、あなたはどう対応していきますか。
巧妙すぎる詭弁は詭弁と気づかないうちに我々を窮地に追い込んでしまいます。
そうならないように、詭弁の使い方を把握して、やり込められないように日々勉強していきましょう。